リアル競馬ネタ

~サンドイッチゲート~ サンドイッチを巡る争いで、競走馬の出走が取り消された物語

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競馬とは、ただひたすらに勝利を追い求めるスポーツである。

レースに出走する競走馬に課せられた使命は、他の出走馬より速くゴール板を駆け抜けること。
それ以上でもそれ以下でもない。

そのような、勝利が絶対の競馬において、出走取消というものはつきものである。
レースに勝つことを目的としているのであるから、
勝ち目の薄い状態にある馬をレースに出走させる意味は薄い。
したがって、病気、体調不良、素行不良など様々な理由によって、
競走馬の出走が取り消されることがあるのだ。

そして、時に出走取り消しは、馬に全く関係のない理由で発生することがある。
あるところでは馬を巡る権利関係の抗争が原因となり、
別のところでは制度変更の弊害による人的トラブルが原因となったり。
意外ともいえるおかしな原因によって、競走馬の出走が取り消されることもありえるのだ。

しかし、いくら馬に関係ない理由で出走取消が発生することがあるとはいっても、
まさか「サンドイッチを巡る騒動」がそのきっかけになると考えた者はいなかったであろう。

今回は、2015年7月に"事実は小説より奇なり"を体現し、
競馬界に笑撃を与えた「サンドイッチ出走除外抗争」(通称:サンドイッチゲート)を紹介する。

やはりサンドイッチ

サンドイッチゲートの始まり


「サンドイッチが用意できないだと?ふざけるな!」

2015年7月5日、世にも奇妙な競走除外劇が、
オーストラリアのRacing.com Park(元Pakenham)競馬場で繰り広げられた。
サンドイッチを巡ってとある調教師と主催者が口論を繰り広げた結果、
調教師が競走馬3頭の出走を取り消してしまったのだ。

事件当日、後に世界中で有名になるニュージーランドの調教師Bryce Stanaway氏は、
管理馬をRacing.com Park競馬場のレースに出走させていた。
出走させていた馬はBlack SoulBardellEntirely PerfectTrinidadianTraveling Wilburyの5頭。
Black SoulBardellは4レース、Entirely PerfectTrinidadianは8レース、
そしてTraveling Wilburyは9レースに出走する予定であった。

出走の予定からも分かるように、4レースから8レースまでの間はStanaway氏にとって自由時間となる。
そのようなこともあって、彼は4レースでBlack SoulとBardellが着外に終わったのを見届けた後、
8レースまでは調教師・馬主専用の部屋で一服しようと考えた。
サンドイッチとコーヒーをたしなみながら8レースまでゆったりと過ごす。
まさに、一寸の狂いもない理想的な一服プランであった。

しかし、Stanaway氏の理想は、儚くもその後すぐに崩れさることになる。
Black SoulBardellを厩舎に引き上げさせた後、Stanaway氏は調教師と馬主専用の部屋へ向かった。
8レースまでのささやかな至福の時を期待しながら、
彼は出走馬の共同馬主を引き連れて部屋に入室したのだ

そして、そこで彼を待ち受けていたのが悲劇であった。

部屋中どこを見渡してもサンドイッチが見当たらない。
サンドイッチが切れていたのだ。

まさかの事態にStanaway氏は愕然とした。
サンドイッチもなしにコーヒーだけで時間をつぶす。
そのような時間は味気なさ過ぎて、Stanaway氏にとっては到底耐えることはできない。
理想的なひとときをすごすためには、やはり何としてでもサンドイッチを手にしなければならないのである。

かくして、ここからStanaway氏のサンドイッチ回復運動が始まった。
コーヒーとサンドイッチを共に楽しむ理想的なひとときをすごすため、
Stanaway氏は競馬場の運営に対してサンドイッチを用意するように要求。
サンドイッチを持ってくることに難色を示す運営側を相手に、攻勢に出たのだ。

サンドイッチを寄越せ!

そして、このサンドイッチ回復要求が、後に競馬界に「笑撃」を与える事態へと発展していった。
サンドイッチを巡る世にも珍しい調教師と運営側による争いはしだいに激化し、
ついには競馬場運営のトップであるMichael Hodge氏までもが参戦。
競馬場とスタッフをバカにされたと感じたHodge氏は、
Stanaway氏に対して、「嫌なら帰れ」といった趣旨の発言をしてしまったのだ。

「そんなに帰ってほしけりゃ帰ってやるよ!」

Hodge氏の発言によって、Stanaway氏は我慢の限界に達した。
頼んだところでサンドイッチ1つすら用意してくれないという競馬場の運営。
おまけに、ひとたび文句を言えば、競馬場のトップからは帰れとの一言を浴びせられる。
もはや、Stanaway氏にとってRacing.com Park競馬場は、
至福のひとときを邪魔する最低最悪の地獄でしかなくなったのである。

こうして、Stanaway氏は地獄ともいえる競馬場から一刻も早く脱出することを決断。
その後のレースに出走予定であった
Entirely PerfectTrinidadianTraveling Wilburyの3頭全ての出走取り消しを要求し、
すみやかに競馬場から帰ろうとしたのであった。

こうなってしまっては、主催者側も無理に引き止めるわけにはいかない。
結果として出走取消手続きがそのまま受理されたため、
おそらく世界で初めてとなる「サンドイッチが原因の競走除外」が成立したのであった。

そして、サンドイッチ回復要求を決行したStanaway氏は、二度と訪れるかという強い決意と共に、
サンドイッチを用意しなかった最低最悪の競馬場と決別したのであった。

終わらないサンドイッチを巡る抗争


Stanaway調教師は激怒した。
必ずやあのサンドイッチを用意しない非情な競馬場に仕返しをしてやらねばと。
これまでに感じたことのない怒りと共に、調教師は競馬場を後にした。


競馬場の運営と調教師がサンドイッチを巡って口論になる。
その結果として、調教師が怒りながら競馬場を立ち去ってしまった。
これだけならば、ただの笑い話ですむような争いである。

しかし、今回のサンドイッチ抗争は、競走馬の出走取り消しという被害をもたらしてしまっている。
まっとうな理由もなく3頭の競走馬が突如レースから出走除外されたことで、
騎乗予定の騎手、ブックメーカー、馬券購入者など、様々な主体がとばっちりを受けたのである。
このまま笑い話で済ましてしまったら、競馬界としても世に示しがつかないところだ。

かくして、調教師Stanaway氏と競馬場CEOのHodge氏の両名によるサンドイッチ抗争は、
第2ラウンドにもつれこむことになった。
第2ラウンドとは、すなわちStanaway氏の処罰を巡る審議である。


審議において議論された点は、主にひとつであった。
Stanaway氏が競走馬の出走を取り消すきっかけになったとされる、
競馬場運営トップのHodge氏が発した言葉である。
つまり、Hodge氏がどのような発言を行ったのかが、審議の焦点となったのだ。

3頭の競走馬を特別な理由もなく競走から除外することは、競馬場に対して損害を与える行為である。
ゆえに、出走取り消し行為に対しては、なんらかの制裁があることは容易に想像できた。
しかし、制裁内容をどうするかとなれば話は別である。
制裁の程度を決定するためには、責任の所在を明らかにしなければならない。
だからこそ、Hodge氏がサンドイッチ抗争の際に発したとされる言葉が、
今回の騒動にどれだけの影響を与えたのかを把握しなければならなかったのである。


そこで、Stanaway氏とHodge氏は採決に対し、それぞれ当日起きた出来事について証言を行った。

まず、Stanaway氏によれば、当日Hodge氏が言い放った発言は二つであったという。
一つ目は、"stop bagging the club"(主催者側をけなすのをやめろ)。
そして、二つ目が"scratch his three horses left to run in the meeting"
(後のレースに出走する3頭の馬の出走を取り消せ)であった。
そのうえで、Hodge氏の発言を受けて馬の出走を取り消したとStanaway氏は証言。
騒動の原因は、競馬場の運営側にあると主張した。


一方、Hodge氏のほうは"stop bagging the club"(主催者側をけなすのをやめろ)と
発言したことは認めたものの、scratch(競走除外)しろと言った件についてだけは否定した。
そのかわり、"not to come back"(二度と戻ってくるな)と
"not to bother nominating his horses to run at Pakenham again"
(当競馬場のレースに、二度とあなたの馬が出走登録してこなくても結構だ)といった趣旨の発言をしたと、
Hodge氏は証言した。

scratch(競走除外)しろと言った件についてHodge氏が否定したため、
結果的にStanaway氏とは意見が食い違うことになった。
そこで、審議会は、騎手のBrian Higgins氏を含む当事者以外の4名からも事情を聴取。
サンドイッチ抗争に決着をつけるべく、最終的な判決を確定させたのであった。

サンドイッチ抗争の結果


サンドイッチを寄越せ!2

結果から言えば、世にも珍しい抗争の決着は、事実上サンドイッチ回復要求側の敗北で終わった。

まず、サンドイッチを部屋に取り戻すべく戦ったStanaway調教師は、
サンドイッチの代わりに2000ドルの罰金支払い命令を得た。
競走馬の出走が特別な理由もなく取り消されたことによって、競馬場に損害が発生したと判断されたためである。

また、今回の抗争を受けて、Stanaway氏はオーストラリア調教師協会を自主的に脱退。
オーストラリア競馬から事実上撤退することを決断したのであった。

このStanaway氏の脱退を受けて、同協会の代表Robbie Griffiths氏は残念であると発言した。
それと同時に、調教師部屋と馬主・調教師部屋は別々の部屋であり、
調教師部屋に馬主を連れ込んではいけなかったとのコメントも残した。
すでに協会を脱退してしまったStanaway氏からしてみれば、いまさらな忠告である。


一方、Hodge氏のほうは、採決から発言に関して注意を受けた。
審議の上では、Hodge氏がScratchという単語を発していないことが認められたが、
「2度と来るな」という発言が出走取消を意味すると考えられなくもないと判断された。
そこで、採決側はHodge氏に対し、今後は発言と対応を気をつけるよう釘を刺したのであった。

そして、審議の判決が出た後、Hodge氏はこれ以上争いを続ける気はないとの意思を表明。
競馬界に笑撃を残したサンドイッチ抗争は、第2ラウンドの決着によって終わりを告げたのであった。


至福のひとときを取り戻すため、サンドイッチを巡って競馬場運営と戦った調教師Stanaway氏。
そんな勇敢なるサンドイッチクルセイダーの名は、
サンドイッチの代わりに2000ドルの罰金支払い命令を得てしまった世界初の調教師として、
長らく世界中の競馬ファンの心の中に刻まれることであろう。

参考リンク集


・The Roar
  "Horses scratched at Pakenham over sandwich row"
・Racing Post
  "Horses withdrawn in row over sandwiches"
・Racing.com
  "Stanaway scratches over a sandwich"
・The Sydney Morning Herald
  "Sandwich row: Pakenham in a pickle over Stanaway sandwich, crusty days ahead"
・Herald Sun
  "Bryce Stanaway’s sandwiches bill reaches $2000 after Pakenham outburst"
・Racing.com
  "$2000 fine for #sandwichgate"


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今年も1年興味深いストーリーやレポ、データを楽しませていただきました。
どうもありがとうございました^^/
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