リアル競馬ネタ

吸引力の変わらないただ一つのテープ ネーザルストリップ再考

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9月21日から3日ほど、このブログとしては異例なアクセス数が記録された。
そして今年に限っては、ここのアクセス数が多くなるときは決まってあるものが関係している。

ネーザル例


それが、ネーザルストリップだ。

昨年、オルフェーヴルが有馬記念に向けての調教時に使用していたことで、
注目を集めたレースでは使用できない馬具だ。
いわゆる、禁止馬具に近いようなやつである。

今年に入ってからは、米国2冠馬カリフォルニアクロームが着用していたことで
日本でも再び話題を呼んだが、ベルモントS後は話題性も徐々になくなっていった。

しかし21日のあたりから、再びこの馬具は競馬ファンの注目を集めた・・・・・・。

調べたところ、ネーザルストリップが再び競馬ファンの間で話題になったのには、
池江厩舎の方針が関係しているようだ。
池江厩舎はこの秋からネーザルストリップを調教補助として本格的に取り入れ始めているとのこと。
それゆえ、トゥザワールドやダノンカモン、さらにはトーセンスターダムという
著名な池江厩舎所属馬の出走と同時に、ネーザルストリップ関連の検索が一気に増えたというわけだ。

そこで、今回はこのネーザルストリップというモノについて再び考えてみたいと思う。

前回の記事ではネーザルストリップの鼻出血に対する効果を中心に調べ、
検索の結果見つけた先行研究4本の結論から、
ネーザルストリップに鼻出血の発生を抑制する効果はあるのかもしれないとした。
そのうえで、ラシックスと違いお手軽にできる対策であるため、
使用しておけばとりあえず調教師は安心できるのではないかと結論付けた。

しかし、前回の記事では、ネーザルストリップが競走能力に効果を与えるか否かについては考えなかった。
したがって、今回はネーザルストリップが競走能力に影響を与える可能性について考えていこうと思う。

ネーザルストリップについて考えるために、まずは製品について簡単な説明を加える。
そのうえで、人に対してのネーザルストリップの効果を考え、
最後に馬に対してのネーザルストリップの効果を考えていく。


製品について

ネーザルストリップまたは鼻腔拡張テープは、鼻腔を拡張するテープである。
ブリーズライト社は人用のものを発売しており、馬用のものはフレアー社が販売を行っている。

鼻腔拡張テープの提供する元々の価値は、鼻腔を拡張することで鼻づまりの解消をはかることであった。
つまり、鼻腔を強制的に拡張してやることで抵抗を減らし、空気の通り道をつくってやろうという発想だ。
決して、スポーツのパフォーマンス向上が主目的ではない。

だが、鼻腔を拡張できるということは、鼻づまりがなければ空気をより多く吸えるようになるともいえる。
これはポアズイユの法則で、通過する空気の体積と鼻腔の直径が比例関係にあることから説明できる。
空気を多く吸えるということは酸素を吸えることも意味し、
それは同時に肺の中で酸素分圧が高められることを意味する。
そして、気体は圧力の高いところから低いところへ移動する性質を持つ。
すなわち、空気をより多く取り込めれば血中に多く酸素を多く送り出すことができ、
それを筋肉で消費することができるためにパフォーマンスが向上すると考えられるのだ。

この考えから、スポーツのパフォーマンス向上に役立つという価値が鼻腔拡張テープに見出されたのだろう。
発売以来、現在でも一部スポーツ選手などがこれを着用しながらプレイする姿が見受けられる。
では、これは本当に人のパフォーマンス向上に効果があるのだろうか。


ネーザルストリップの人に対する効果

ここで適当に検索して出てきた先行研究の一つでも見てみよう。 (リンク
この論文は1998年に発行されたもので、ネーザルストリップを使うことでインターバルトレーニングの
パフォーマンスが向上するかどうかを調べているものである。
そして、結論ではネーザル・ストリップ装着時と未装着時でのパフォーマンスに有意な差は見られないため、
積極的に導入する意味はないであろうとしている。

すなわち、ネーザルストリップは人のパフォーマンスを向上させないのだ。
空気を多く取り込めるようになるはずなのに、パフォーマンスが向上しないのはいったい何故か。
それは、実際にはそこまで空気を多く取り込めるようになっていないためである。

鼻腔の抵抗が小さいほど、空気を多く取り込めるようになる。
それゆえ、鼻腔を広げるネーザルストリップは、鼻でより多くの空気を楽に吸えるようにする効果がある。
ここまでは間違ってはいないだろう。
しかし、人には鼻なんかよりも大きく多くの空気を取り入れられる場所があるのだ。

そう、だ。

人は激しい運動をするとき、一定の強度に到達したら自然に口呼吸へと移行する。
それゆえ、鼻腔を拡張した程度で追加で取り入れられる空気など、実は大したことないのだ。

一応、ネーザルストリップを利用すれば、鼻呼吸から口呼吸へ移行するタイミングを
少し遅らせることもできるといわれている。
もっとも、遅らせたところで果たして何の意味があるのかといったところだ。
どちらにしろ吸う空気の量は変わらないのである。
パフォーマンスの向上には到底つながらないであろう。

したがって、人にとってネーザルストリップは鼻づまりの息苦しさの解消には効果があるが、
直接的なパフォーマンス向上には役に立たないといえる。


馬の場合

前回の記事では、ネーザルストリップは馬の鼻出血に効果があるかもしれないという結論を紹介した。
馬具の開発目的が、運動誘発性肺出血(Exercise Induced Pulmonany Haemorrhage: EIPH)を
抑制する
ことであったため、その目的は果たしているといえるかもしれない。
しかし、よくいわれるパフォーマンス向上効果となるとどうであろうか。
ここからはそれを考えていく。

ネーザルストリップは人の鼻づまり解消には役立つが、パフォーマンス向上の役に立つとはいえない。
それは、人に口呼吸というより多くの空気を取り込める手段があるからである。

しかし、馬の場合はどうであろうか。

馬は人と違い口呼吸という手段を持たない。
調教中もただひたすらに鼻で激しく呼吸をするのみだ。

それならば、ネーザルストリップの効果で楽に空気を多く吸えば、
パフォーマンス向上にもつながるのではないか。
そのような考えが出てきてもおかしくはないであろう。

こじ開ける


しかし、結論から先に言うとそれは難しいといえる。

全身持久力の測定基準に最大酸素摂取量というものがあるが、
これは運動中に体内、またはミトコンドリアに取り込まれる酸素の最大量を表すものだ。

ここで注意しなければいけないのは、最大酸素摂取量はあくまで体内に取り込んだ酸素量を表すもので、
吸った空気の量自体は関係ないということだ。
要は、空気をたとえいつもより多く吸ったとしても、肺や赤血球やミトコンドリアの働きで
酸素が体内に取り込まれてエネルギーに変化されなければ意味がないのだ。
余った酸素は息を吐くときに吐き出されるだけである。

体内に入り込むラシックスなどと違い、
ネーザルストリップはあくまで鼻の外側に張り付ける補助的な道具でしかない。
それゆえ、心肺機能に直接関係のある赤血球やミトコンドリアの働きに対して干渉することはできないのだ。
これでは、いくらネーザルストリップの装着で空気の通りがよくなったとしても、
心肺機能自体を向上させる効果を期待するのは難しいといえるであろう。


最後に

以上のことから、ネーザルストリップに直接的なパフォーマンス向上効果は期待できないと思われる。

ただ追加の効果があるとすれば、2つほどの可能性が考えられるだろう。
一つは、鼻出血を発症している馬を競馬ファンが見極められるかもしれないという効果だ。
特にネーザルストリップは、重度のEIPHを発症した馬にはより効果的であるといわれていることから、
突然着用をはじめたら鼻出血がクセになっている可能性があるかもしれない。

しかし、重度でなければEIPHは競走能力競走寿命に対して影響を与えないという統計結果もあり、
クセになっている馬を見つけるに意味があるのかは疑問である。
加えて、池江厩舎のように全頭に対して積極的に使用している場合は、シグナルとしても役に立たないだろう。

もう一つ効果があるとすれば、ネーザルストリップは注目を吸い寄せやすくなるということだろうか。
ベルモントSの時はブリーズライト社が、カリフォルニアクロームの活躍に乗じて、
応援用の特性ネーザルストリップを限定販売するなどのプロモーション戦略を実行した。
おそらく、製品の知名度が上がり、売り上げも伸びたことであろう。

しまいには、こんなブログのアクセス数ですら一時的に上げてしまう程の効果ももっている。
注目に関してだけは、まさに驚異の吸引力をほこるといっても過言ではないだろう。

ただし、この効果は一時的なもので持続しないため、効果といっていいかどうかは怪しいところだろう。

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~ Comment ~

Re: NoTitle 

> 331さん

貴重な情報ありがとうございます。

鼻出血発症の増加に関してですが、
調べてみたら発症が増加傾向にあるとしている記事が2点ほどでてきました。
実際に増えているかは別として、関係者の体感的には増えているという認識なのかもしれませんね。
  • #107 馬主のようでそうでない人 
  • URL 
  • 2014.09/30 22:44 
  •  ▲EntryTop 

NoTitle 

馬主のようでそうでない人さんこんばんは。

ネーザルストリップですか、むかしキャットシーフがつけていたので、
印象に残っていますね。

そうですねえ、鼻出血防止という面で使われている方が多いようですね。
さすがに自分は直接付けている馬を見たことはありませんが、
最近は鼻出血を起こす馬が多くなっているという噂を聞いたことがあります。

それが調教の強度によるものなのか、餌や投薬の影響なのかなどはわかりませんし、
実際に鼻出血が増えているというデータも自分は調べたことがないですからねえ。
自分はもう馬の世界から離れて結構経ちますので、
これ以上のことははわかりません。


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